曲げ物工房をおとづれる
岐阜に用があり、娘を誘ったとこり、「行くよー。」と返事が来たので久々に一緒に旅に出ましたよ。
麹を仕込むために半年ほど、和せいろを探しておりましたがなかなか見つからず、直接工房さんへ伺ってきました。
そうしましたら、職人さんが声をかけてくださり、作業工程の一部を体験させていただけることになりましたよ。
樺とじと言われるこの作業。
山桜の皮を丁寧に丁寧に、薄く削って、穴を開けたセイロ本体に編み込んでいきます。
手を動かしてみると、その素材のことや、物ができていく工程へ思いを馳せることができます。
体験することで生まれる「想いを馳せる力」
個人的には、この「想いを馳せる」という時間が、少し足らない気がする現代の暮らし。
東京での暮らし→タイの山岳地帯での暮らし→月42000円のアパート暮らし→雪国で自給自足の暮らし
をしてきた我が家ですが、そんな経験をさせてもらってみて、効率が良い社会の流れと引き換えに失ってしまったものでもあるように思うのです。
例えば、お料理をするとき。。
以前の私は、まず、スーパーに買い物に行くところから始まりました。野菜の選び方は鮮度が良いことと、値段。
「食育」的なものを、学校で学んできたはずなのに、現実とは何だか切り離されていて、選ぶポイントはそれしか持ち得ていなかったんですよ。
野菜が畑で育つという、ごく当たり前のことを想像しながら買ったことはほとんどなかったように思います。
そしてね、いつの時期でも彩りの良い、割と新鮮と思える野菜が手に入ることに何の疑問も抱かなかった。
今でも「食育」という分野はあるものの、やっぱり、子どもたちが、「スーパーに積まれた野菜の背景を想像する」のは難しいのではないかな?って思うのです。
そんな私は、自分で畑をやるようになって、農家さんにもお手伝いにいくほどに興味を持ち、色んな視点で選べるようになりました。
スーパーに積まれた野菜を見るとおもいます。
今年は大根が小さいな。ああ、夏の暑さが長かったものね。きっと農家さんは頭を悩ませたのだろうな。。
そしてね、選び方も変わってきます。
畑を想像し、農家さんに感謝をし、その方達の生活にも思いを馳せることができるようになっていきました。
我が家の食卓を潤してもらった分、その方達の生活も潤ってほしいという気持ちが湧いてきます。
せいろに関しても同じだったんです。
このせいろをつくる材料がどこからきたものであるのかを想像することで、自然のことに目が向き、自然を大切にしたいと思える。
そして、豊かな資源と、この技術がいつまでも続いていってほしいと思う。
「想像力=思いを馳せる力。」ですね。
これがとても大切なことだと思うのです。
職人さんの思いを感じながら。
樺とじの後はかんながけを行うそうです。
自分で手を動かしてみて初めて、細かなところまで丁寧にやっている職人さんの凄さが伝わってきます。
仕事場、壁にまでついたきな粉のような木屑、良い香り。
日本の伝統技術の良さや素晴らしさを、それを本当に大事にしている人から感じさせていただいた大切な時間。
現場まで出かけた1番の理由は、私がどう作られているのを学びたくていったのだけれど、この技術が子どもたちの世代にも続いていくことを祈っています。
作業が終わった後、娘は工房をくるりと眺め、あんなものがあること、こんなものがあること、製品の裏には大切に作ったのにもかかわらず、売り物にならなかったものもたくさんあることを知ったようです。
物を作るうえで、大人ですらいつもコンスタントに完璧にできるわけでは無いということもこうして知っていくのでしょうね。
「失敗しても大丈夫。この経験から学び、次はもっと良いものが作れるんだ。自分の手や感覚が失敗を通してどんどん進化していくのって素敵なことだよ。」
それを子どものうちから知っていたら、生きるのが楽に、楽しくなっていくのでしょうね。
失敗したら恥ずかしい、怖い。。そんな緊張感はどんどん減らしていったらいい。
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工房内に積み上げられた製作中の曲げ物たちをみて愛おしさと大切さを感じた娘は、
「私も15センチのせいろ、自分用に欲しいなあ。そうしたら色んなものが作れるね。」
と口にしていましたよ。
一つのものが、どんな思いで、どう作られているかしったことで、自分がどうして行きたいかという思いも馳せることができたのでしょうね。
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一つの物を見て、それが自分の手元に届くまでの背景(過去)を想像すること、これからそれをどう生かしていくかを考え想像すること(未来へ)。
この作業を、暮らしを通して、子どものうちから、できる限り丁寧にやっておくと、たくさんのことに結びついていくようなそんな気がして、文化に触れることを大事にしながら旅をしています。
こんかいの記事のテーマ、「物事の背景を知る。」ということ。
これもまた、タイの山岳地帯の感覚から学ばせていただいたことなんですよ。日本では情報が多すぎて、流れが早すぎて、わたしには身についてこなかったことですが、とても大切なことだと感じています。
この国で引き継がれた素晴らしい文化に沢山触れて、この国の良いところを沢山知っていくと楽しいでしょうね。
最後になりましたが、職人さんへ。
本当にね、とても素敵な大切な体験をさせていただきました。
ありがとうございました😊🙏