暮らす環境を変えてみる。
その夏はトータルでひと月、テントを張って暮らしました。
ある時は湖のそばで、
ある時は、山の麓に、
ある時は砂浜に。
徒歩での移動ですから、お風呂や洗濯物臨機応変に。
小さなものは海水浴場に泊まった時など、チャンスを狙ってそっと洗ってテントの上に干して暮らします。
いつもの山暮らしでも、不便な暮らしをしていますが、こうしてバックパックひとつで歩いて、寝床を決め暮らしてみると、それでもどれだけの恩恵の中で暮らしているかが、身をもって感じられます。
「いつでも水が使えて、電気が使えて、温かいものが取れる。」
そんな日々は感謝以外の何物でもないんだね、と子どもたちが言います。
そしてね、お風呂は入れる時を狙って寄るので、寝る時までにまた真っ黒になってしまうこともあります。
そんな日々を通して、できる範囲で生きていく緩さが身についていきます。
多少汚れても人は生き抜く力があるんです、笑。
そして、できないことは諦めて受け入れる。
そんな気持ちが生きることを楽にしてくれます。
今は、大工さんが立てたお家に住み、季節を問わず食材が手に入り、スイッチひとつで電気も火も使えてしまうので、知らず知らすのうちに私たちは、快適に暮らすことが当たり前の感覚になりがちですが、この感覚を崩してしまうと、物欲から逃れられたり、美味しい物を食べ過ぎずに済んだり(食べ過ぎないと身体もお財布も楽です)するんですよね。
「今の流れを受け入れる。」
いつも頼っていた「お父さん」がいないことで、母子3人、力をフルで使って、それ以上のものは求めない、そんな体験も積み重ねることができました。
そうそう、最終日、車で最寄り駅まで迎えにきてくれたYuki(父)を見た途端、「やっぱりパパがいてくれてよかったねえ」、と日頃の感謝をずっしりと感じる時間もとてもよかったですよ。
大変だったことといえば。。
国道や農道を地図を片手に歩いていましたが、目的地周辺だけ、なぜか抜けていたことがありました。
ケータイのナビを使ってみましたが、それもあっという間に充電切れ。
夕方を目前に路頭に迷ったことがあったんですね。
このままもう少し、目的地を探し続けてみるか、(暗くなったら夜を越す場所がないので)引き返すか、3人で話し合いました。
決断をしないと夜になる。
本気で話し合い、もう少し探すと決め、この時はありがたいことに暗くなる前に辿り着けたんですね。
旅は、決断、覚悟、勇気、行動の繰り返しです。
でもそれを通して育つ自分を信じられる力はとても大きい。
そんな力も育ちます。
自然の凄さを目の当たりにする。
(引き潮の時だけ現れる温泉に浸かりながら。)
歩くことを沢山したので、「歩くペースで過ごしてみるといつもは見えない物がみえてくる。」という実感も味わった私たち。
自然の凄さにも沢山触れました。
こちらは道南にある、海が引き潮の時だけ現れる温泉です。
引き潮になり、少しずつ温かい温泉水が溜まっていきます。
そして、たくさんの子カニたちが茹でガニになってる様も見えます。
リアルな自然の凄さにも圧倒されます。
とあるキャンプ場では、セミの羽化の日にぶつかりました。
この日はたくさんのセミたちが一斉に羽化を始めたのです。
殻から出た成体は、羽の色が透き通った緑色。
明け方にかけて刻一刻と七色に輝きを変えながら、羽を広げ、乾かしていきます。
自然の織りなす色と不思議に目を奪われながら一晩を過ごしました。
明け方になって羽化することのできなかった個体を見つけましたが、そちらは他の虫の餌になって循環に帰って行っていました。
教科書では学ぶことのできない、自然の成り立ち。
歩くことで、「今」に時間をかけることで、見えてくる学びがありました。
人の暮らし
こちらはてんさい大根の山。
これから集めて運ばれて、工場でお砂糖が作られるのでしょう。
こちらは玉ねぎ農家さんの倉庫前。
どれほどの玉ねぎが詰まってるのでしょう。
こうして私たちは生かしてもらってるのだと実感します。
こちらはとうもろこしの茎等でしょう。
これをユンボですき込み堆肥にしていくのだと思います。
想像を絶する農家さんのお仕事量。
そう、自分の暮らしはどう成り立っているのか、大人ですら想像に及ばないところが沢山あるんですね。
そして、それがあるから私たちは美味しい物をいただけるのだと、改めて圧倒されながら感じてきました。
自ら感じ心が動いた時。
それは、「生きるのを楽しくしていくチャンス」だと思います。
私たちは、ひと月ほど、暮らす環境をかえてみました。
変えて見た、というより、気づいたら変わってたんですけれども、笑。
自らの目で見たもの、感じたことってとても大きなものだと痛感しています。
人は心がゆれることで、想像力や思考力を働かせます。
学校の中で学べることは広く浅いです。
だからこそ、その中からいろんな子供たちの興味が引っかかるのでしょう。
それはとても素晴らしいし、面白いこと。
同時に学校では体験できないことがあります。
自分が心が動いた時、立ち止まって丁寧に感じ、かんがえること。
集団の中では、一人ひとりの興味も違いますから、そこに時間をかけることはとても難しいなと私も思います。
だから旅するフリースクールとして、こどもの時間に寄り添いたいと思い、学校以外の時間をじっくりと作っています。
歩くことでたくさんの興味のきっかけを見つけられることは間違いないとこの旅で感じましたので、みなさんも、いつもの道を歩いて移動してみることをお勧めしますよ。